線の美学

line

アーティスト名もタイトルもないシンプルなデザインー最近では、珍しくもないことですがーに惹かれて購入したアナログ盤。2014年2月に発売された、イギリス・マンチェスター出身の若手ピアノトリオ「ゴーゴー・ペンギン」二作目となる『V2.0』です。

マンチェスターと言えば、香川真司。ではなく、1978年創立のインディーズ・ロック・レーベル「ファクトリー・レコード」(このレーベルを描いた映画『24アワー・パーティ・ピープル』もオススメです!)。そこの専属デザイナーとして、ニュー・オーダーや、ジョイ・ディヴィジョンの名ジャケを世に送り出したピーター・サヴィルを思い出させるミニマルなデザインです。無秩序にばらまかれた黒い縦線。ホワイトスペースにただならぬ緊張感が漂います。ジャズ、ですね。

この「線」と「間」の美学。歴史をぐぐーと遡れば、有名画家のパウル・クレーや、ピート・モンドリアンなどの名前も挙がりますが、たどりつくのは1800年代の浮世絵ではないでしょうか。西洋の作家たちに大きな影響を与えた「ジャポニズム」。雨を「線」として描いた歌川広重の作品は、世界に衝撃を与えたといいます。

『V2.0』のアートワークを手掛けたダニエル・ハルサルのことを調べると、ジャケットからは想像つかないような、淡くカラフルな世界観を描く若手アーティストでした。しかし、モチーフや色彩、構図からは浮世絵の影響を強く感じさせているのが興味深いところ。

ところで、このジャケット、何に見えますか? 歌川広重の話をしたせいで、雨にも見えてきましたし、真っ白な氷の世界に住むペンギンの群れにも見えてきました。 何気なく、縦線の数を数えてみます。…36個、ピアノの黒鍵の数。

Writer: 藤岡 宇央

藤岡 宇央